004 となりのゴミ箱くん

好物は信玄餅です。もちづきです。食べすぎてこのあいだ取り上げられました。

 

革靴が食べられるだの、こんにゃく芋をあれやこれやするとぷるぷるなサムシングができるだの、人間の食の世界の探求の尽きぬことやさることながら、そんな血を継いだもちづき少年もまた様々なものを口にしておりました。

 

シロツメクサ、たんぽぽ、ツクシ、スベリヒユ…いわゆる雑草をそのまま食べたり、料理して食べてた記憶があります。お腹空いてたんですよね…。

 

まあそんなものは可愛いものでして。小学校の頃何でも食べてしまうために「ゴミ箱」とあだ名をつけられた歯がぼろぼろな男の子が知り合いにいました。普通に話せる上なかなか勉強もできるやつだと思っておりましたが、隣の席になったときその真の顔を見ることと相成りました。

 

授業中、自分はよくノートを取るのが好きでひたすら書いていたところ、どこからともなくガリッ…ガリガリッ…と木の削れるような音がしてきました。家がシロアリに侵されたことがあったので、そして古い校舎だったのでどうせシロアリか、と一瞬考えるのもつかの間、シロアリの癖に床から音が聞こえているわけではないのです。聞こえるわけないし。そこで僕は隣の彼に「木の削れる音聴こえない?」と確認を取ろうと左を振り向くと…

 

…口から出血したゴミ箱くんがいるではないですか。ビビりだった僕は即先生に報告、彼は保健室まで運ばれ、隣の席には彼の勉強道具と血まみれの鉛筆が残っておりました。鉛筆の尻がかじられているのであれば分かるのですが、折られたような、でも折ったようではない断面をした鉛筆。ゴミ箱くんの本性に初めて気がついたときでした。10月の涼しい空気、パーカーの心地よさ、隣の席の彼に対する言いしれぬ恐怖。

 

そんな彼は中学受験をし、名門大学附属に入ったと。それから連絡はとっておりません。今頃何を食べてるんでしょうか…

 

ちなみに信玄餅を没収されたのは3日前、職場のゴミ箱から信玄餅の赤い包が見つかったのもまた3日前、そして社長の口の周りにきなこがついていたのも3日前。まあ社長が自分で買ったという線もあるので不問としております。おやすみなさいませ。